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INTERVIEW

「その依頼、現地にいる私が代行します!」コロナ禍で需要増の“遠隔作業代行サービス”を開発した想いとは

株式会社toraru
代表取締役 西口 潤

    コロナ禍の今、国内外への移動は以前に比べて大きく制限されています。「帰省したいけどできない」「旅行を諦めざるを得ない」という人や、出張ができないために業務に支障が出て不便を感じているビジネスマンも多いことでしょう。そんな悩みを、「代わりに現地で作業します」「現地を一緒に歩きます」という、“瞬間移動”のような切り口で解消してくれるのが、株式会社totaruが運営するサービス「GENCHI」です。代表取締役の西口さんに、「GENCHI」の活用例やこれからの展望、起業前後のエピソードを伺いました。

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    国内外問わず、現地にいる人にあらゆる作業を依頼できるサービス

     まずは事業内容について教えてください。

    西口 距離の隔たりによる不利益を感じない社会を実現するために、オンラインサービスでさまざまな格差を解消する事業を行っています。メインは、現地作業代行アバターサービス「GENCHI」です。フローとしては、諸事情により現地に行けない方が、現地にいる「働き手」に、何らかの作業を依頼。依頼を受けた働き手が、代わりに作業をしたり、必要であればライブストリーミングで繋ぎ体験を共有したりするものです。そのシステムとマッチングプラットフォームを提供しています。“Skype+ネットで仕事依頼”のようなサービス、“Uberの作業代行・体験代行版”というとイメージしてもらいやすいでしょうか。

     いくつか、使い方の例を教えていただけますか。

    西口 たとえば、「管理しているビルに不具合がある」と知った不動産会社が、現地近くにいる働き手に依頼して代わりにビルに駆け付けてもらい、不具合のある箇所を報告してもらうという使い方などが可能です。また、先日は出張時に印鑑証明が必要になったため、働き手の方に代理で取得して送付してもらいました。ビジネスから生活に密着したものまで、いろいろなことを依頼できます。

    02

     コロナ禍で、移動に制限がかかる中では重宝されるサービスかと思います。

    西口 これまでは海外に飛んで現地視察をしていた企業が、出張に行けなくなり困っているケースは多くあります。海外にも働き手がいるので、現地にいる働き手と繋いで周辺を移動してもらいながら画面越しに現地視察をする、といった使い方もしていただいていますね。オンライン帰省や墓参り代行の需要も高まっています。ある程度通信機器の操作がわかる親御さんであれば普通にテレビ電話ができますが、繋ぎ方がわからない高齢の方もいますよね。そうした場合に、実家近くにいる働き手に依頼し、代わりに訪問して接続してもらい会話を楽しむことも、働き手への信頼があればできるんです。

    コロナ禍で、需要も「働き手」の数も増加

     「GENCHI」のしくみは、とてもわかりやすく世の中のニーズも捉えているように感じます。単純な疑問ですが、なぜこれまで類似サービスが現れなかったのでしょうか。

    西口 大きな理由は、通信環境やスマートフォンの性能の問題だと思います。ここ数年で通信速度がとても速くなり、スマートフォンのカメラの性能もぐっと上がりましたよね。これにより、ストレスの無いライブストリーミングが容易に可能になったんです。次に、ユーザー側の意識です。拠点間のテレビ会議くらいなら多くの人に経験があったものの、オンラインでのコミュニケーションにどこか不安を感じている人が多かった。けれど、コロナ禍によって環境が一変し、「オンラインでのコミュニケーションって、意外とストレスが無い」とみんな気付き始めたんです。だから、こうしたサービス利用への抵抗も薄れてきています。また、働き手を集めることも容易では無いので、シンプルに見えるわりには参入が難しい領域だと感じています。

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     「働き手」の新しい働き方が、地方に住む方の職業の選択肢を広げるようにも感じました。

    西口 「こんな働き方があるなんて初めて知った」と言ってくれる方もいます。コロナの影響で勤めていたホテルを解雇されてしまった方や、仕事がぐっと減ってしまったツアーコンダクターの方からの応募も増えていますね。

     現在はどんなことに注力していますか。

    西口 言葉が通じない海外の方ともスムーズにコミュニケーションができる環境を整備することで、国際間の依頼をより活発にしたいと思っています。次のシステムアップデートでは、簡単に相互にコミュニケーションできる機能を実装予定です。

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    ITに可能性を感じ、さまざまなビジネスへの挑戦を経て今の事業に

     IT分野で起業したのはどうしてですか。

    西口 僕が大学を卒業した2001年は、ちょうどITベンチャーブームでした。時代に合っているし、大きな初期投資も在庫を持つ必要も無い、身軽に始められるビジネスであることに魅力を感じたんです。文系の学部出身で知識が無かったので、IT企業に就職して3回ほど転職をしながら、さまざまなシステムの企画や開発に携わり、スキルを身に付けて起業しました。

     起業後もさまざまなビジネスに挑戦されてきたそうですね。

    西口 日本では希少価値の高い海外製品を輸入して販売したり、“ひとりメーカー”のような立ち位置で、お店や施設向けの機材を開発し販売したりしていましたね。その機材は大手さんにも導入いただくなど順調でしたが、大企業が同分野に参入して無料で同様の機材提供を始めたので、撤退しました。その後、遠隔地から操作して動かせるロボットの販売もしていたのですが、段差を超えるのが難しかったり安全のためには現地で人が付いていないといけなかったりといった課題もあり、実用性は高くないと感じて。その経験から、ロボットではなく高速通信と人を組み合わせたら、どこにでも行けるしどんなことでも頼めるのではないかと思い、今の事業に至っています。

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    積極的に人に頼ることで、誰もが自己を拡張していける社会をつくりたい

     今後のビジョンを教えてください。

    西口 日本から海外、または海外から日本という、相互に自由に疑似来訪が簡単に可能となる仕組みを提供しようとしています。既に、視覚・聴覚だけでなく、他の五感も再現しようと実験をしています。また遠隔決済のような情報のやり取りする特許を取得したので、遠隔で海外の街中で買い物をして国内に配送してもらうようなことがオンラインで可能となる日も近いです。積極的に誰かに頼ることで、自分のいる場所に関係なく、自己を拡張していけるような社会をつくりたいんです。

     最後に、これから関西で起業をしようとしている方に向けてメッセージをお願いします。

    西口 6〜7年ほど前、いくつかの起業支援機関に相談に行きました。ただ、大阪はもともと“中小企業の街”であり、当時はまだ関西にスタートアップ支援のノウハウが無かったため、スモールビジネス支援をされているような違和感を覚えたのが正直な感想です。しかし、当時と比べたら、関西もスタートアップを支援する環境は良くなってきています。個人的には、関西で起業するのであれば関西の支援者は巻き込みつつも、同時に東京にも足を運んで広く情報収集し続けることをおすすめします。

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    チャレサポ面談
    writer_kuramoto

    ライター

    倉本 祐美加

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