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INTERVIEW

「すべての病院に集中治療医を。」レベルの高い医療を地方や海外に届ける、現役医師の挑戦とは

株式会社T-ICU
代表取締役社長 中西 智之

    日本には集中治療室(ICU)や高度治療室(HCU)は約1000施設あります。そのうち集中治療医がいるのが300施設。残りの700施設は集中治療を専門外の医師が担当しているのが現状です。ICUやHCUの現場が抱える課題に対し、テレビ会議システムを活用して遠隔地にいる集中治療医がアドバイスをする「遠隔ICU」の普及に取り組んでいるのが、株式会社T-ICUです。代表取締役社長の中西さんに、事業を始めようと思ったきっかけや今後のビジョンなどを伺いました。

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    日本で先駆けて、遠隔による集中治療支援サービス「遠隔ICU」を提供

     まずは事業内容について教えてください。

    中西 「すべての病院に集中治療医を」をミッションに掲げ、医療機関に対して遠隔による集中治療支援サービス「遠隔ICUを提供しています。T-ICUの集中治療医が、現場の医師や看護師から提供された情報を24時間365日体制でモニタリングし、早い段階で的確な治療方針をアドバイスすることで、重症の患者を早期回復へと導くとともに、現場の医師や看護師の負担を軽減することを目的としています。

     T-ICUが提供する遠隔ICUシステムの仕組みを教えてください。

    中西 当社が提供する専用端末に、心電図モニターや電子カルテ端末を接続して、患者のデータを表示する画面を転送してもらいます。院内のネットワークに接続する必要はありませんし、画像を共有するだけですので、個人情報を含むデータを送受信することはありません。ビデオ会議機能を利用して、共有した画面を見ながら集中治療医が相談に応じます。

     この事業を始めようと思ったきっかけは何ですか?

    中西 日本には医師が約32万人いますが、集中治療の専門医は0.6%の1900人にとどまります。私自身、麻酔科医として、また集中治療医として現場で働いていると、専門医がいる病院とそうでない病院とでは、診療レベルにかなりの差があると感じるようになりました。集中治療には専門医が関わったほうがいい。何か状況を打開できる方法はないか考えていたときに、創業メンバーでもある医師の一人から、アメリカでは遠隔集中治療が普及しているという話を聞きました。遠隔集中治療は、アメリカではすでに20年ほどの歴史があり、導入前と後で比べると救命率が上がるといった論文も出ています。日本でもそういう取り組みをしたほうがいいと思い、事業を始めることにしました。

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    遠隔医療の普及によって、あらゆる地域にレベルの高い医療を提供したい

     現在注力しているのはどんなことですか?

    中西 導入病院を増やすことです。他科の医師に、集中治療医はどんなことができるのか、集中治療医がいたらどう助かるのかを知ってもらい、必要性を理解していただければ導入につながるのですが、まだそこまでの認識を持ってもらえていないという現実があります。また、導入には費用がかかります。病院側としては、診療レベルの向上が収益アップにつながるわけではありません。なぜなら、遠隔診療に特別な診療報酬がつくわけではないので、どうしても出費が増えてしまうのです。

     今後のビジョンを教えてください。

    中西 遠隔医療って地域に貢献できると思うんです。例えば、兵庫県に住んでいても北海道の医療をサポートできますし、離島やへき地の医療をサポートできる。遠隔医療で日本の診療レベルを良い意味で底上げし、均一化させることができるのでは、と考えています。さらに、日本の医療レベルは高いので、海外で期待されていることも多くあります。遠隔医療で日本全国はもちろん海外にも貢献していきたいです。

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    やりたいことを実現するためには、起業という手段しかなかった

     もともと起業志望だったのですか?

    中西 いえ、起業する気はまったくありませんでした。前提として、遠隔ICUは医療行為には当てはまりません。ですので、仮に私が遠隔ICUを行う医療団体を立ち上げたとしても、医療行為を行うのは現地のクリニックや病院になるため、医療従事者として進めるのは難しいことがわかりました。そこで、仲間や運営費用などの受け皿としての役割も果たすために、株式会社を立ち上げた感じです。やりたいことを実現するには、起業以外の手段がありませんでした。

     起業して良かったことはありますか?

    中西 医師の立場では出会えなかった人と会う機会が増えました。内閣府の規制改革推進会議や厚生労働省、経済産業省に声をかけていただいたり、VCと出会ったり。いい経験をさせてもらっていると思います。

     起業後、どんなところに苦労されましたか?

    中西 私たちは遠隔ICUが必要だと思ってやっています。しかし、他の科の医師からすると、集中治療の歴史は浅く、何を私たちに任せられてどんなメリットがあるのか、私たちがうまく描かせることができずにいます。また、集中治療に専門医がいることを知らない医師もいますし、救急専門医と混同している場合もあります。そのギャップを埋めるのに苦労していますね。だから、今、集中治療を題材にした漫画を作ろうと少しずつ動いているところなんです。一般の方はもちろん、病院経営の方にも読んでもらえるようなものを作りたいと思っています。

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    兵庫県や神戸市は、スタートアップ支援に積極的

     起業にあたって活用した機関や制度などはありますか?

    中西 2017年度の「HYOGOクリエイティブ起業創出コンテスト」に応募しました。選ばれると事業の立上げや研究開発に必要な経費の一部を助成してもらえます。また、さらに大きなビジネスコンテストへの出場の機会もいただけます。クリエイティブ起業創出事業の中で、米国のシード投資ファンド「500 Startups(ファイブハンドレッドスタートアップス)」に事業計画を手伝っていただいたり、プレゼン資料についてのアドバイスをもらったりしました。兵庫県や神戸市はスタートアップへの支援に積極的なので助かります。

     最後に、これから関西で起業をしようとしている人に向けてメッセージをお願いします。

    中西 私は大学卒業後は京都や熊本、東京など全国の病院を転々とする生活だったのですが、兵庫県出身ということもあり、前から住みたかった西宮市に住んで起業しました。住みたい街に住んで、やりたいことが出来ているので満足度が非常に高いです。東京に行かなくてはいけない場面はあるかと思いますが、住みたい場所や働きたい地域で頑張ればいいと思いますし、それよりも大事なことは、困難にぶつかった時に信念や想いを持ち続けることだと思います。

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    チャレサポ面談
    水本このむ

    ライター

    水本このむ

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