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株式会社リモハブ

代表取締役 谷口 達典

心臓リハビリを在宅で実現できる未来を目指して。遠隔医療をデザインする医師起業家の想いとは

新型コロナウイルスの感染拡大を背景に「オンライン診療」が加速しており、受診経験のある方も増えていることでしょう。この遠隔医療の領域で、「遠隔リハビリ」の普及に向けて取り組んでいるのが株式会社リモハブです。J-Startup KANSAI選定企業でもあるリモハブは、日本に120万人以上いると言われる心不全の患者さんを対象に、遠隔で安心かつ適切な心臓リハビリができる環境を整備しようと事業に取り組んでいます。医師であり起業家でもある代表取締役の谷口さんに、事業を始めた経緯や中長期的なビジョン、起業してみてのリアルな実感などを伺いました。

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家にいながら、安心して適切な心臓リハビリを続けられる環境をつくりたい

 まずは事業内容について教えてください。

谷口 当社は「遠隔医療をデザインする会社」として、特にリハビリ領域の遠隔医療に取り組んでいます。具体的には在宅で心臓のリハビリテーションを可能にするもので、患者さん宅に医療用アプリとエクササイズバイクを提供し、ウェアラブルの心電計を付けてバイクをこぐと、脈拍・心電波形といったデータが病院にいる看護師などに伝わり、問診や指導が受けながらリハビリを実施できる仕組みです。患者さんは、常に安全に適切な負荷で運動することができます。現在は治験段階で、最終的には新医療機器として承認を受け、保険を使って利用できる医療とすることを目指しています。

 なぜこの事業を始めたのですか?

谷口 もともと循環器内科医でして、5人に2人が入院を繰り返すなど再入院率の高い病気である心不全の再入院を予測するための指標を研究していたんです。研究を進める中で、もう少し直接的に再入院率を下げる方法が無いかと調べていて、心臓リハビリに目を付けました。心不全患者に対しては、1回30~40分、週3~5回の有酸素運動が推奨されているんです。こうした心臓リハビリは有効にもかかわらず、心臓リハビリを行うことのできる施設がまだ多くなかったり、高齢者の患者さんにとって週3回の外来通院が大変だったりといった理由から、継続的に週3回程度のリハビリを受けられている患者さんは1%以下だと言われています。在宅でリハビリができれば、付き添うご家族の負担も減らせて患者さんがリハビリしやすくなり、再入院率を下げられると思いました。

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200~300個ものアイデアの中から生まれた事業

 事業にはどのようなこだわりがありますか?

谷口 患者さん、患者さんのご家族、病院、医師、看護師といったステークホルダー全員にとってWin-Winであり、サステナブルな事業であることです。当社は、「ジャパンバイオデザイン」という医療機器開発の人材育成プログラムから生まれています。これは医師とエンジニアが3~4人のチームになって医療現場に入って観察を行い、効率的でない部分や改善できる部分を見つけてアイデアを出し合うというものです。200~300個のアイデアの中で、もっとも全員にとってWin-Winであり、サステナブルだと思ったのがこの事業でした。現在は治験のフェーズですが、患者さんからのニーズも高まっていますし、医療機関も「心臓リハビリを受けられる患者さんが増える」と期待して待ってくれています。

 今後のビジョンを教えてください。

谷口 まずは治験をきっちり進めて、2023年までには新医療機器として承認を受け、保険を使って利用できる医療とすることを目指します。そして、日本全国はもちろん海外にも製品を届けていきたいです。現在はリハビリテーションという運動療法の領域に取り組んでいますが、将来的には服薬管理や栄養指導も組み合わせて遠隔で提供できるプラットフォームに育てていきたいですし、対象を心疾患だけでなく生活習慣病や認知症やうつ病などの別の疾患にも広げていって、健康的に長生きできる方を増やしたいです。高齢者になってもずっと健康で自立して生活を続けられたら高齢者も幸せですし、少子高齢化社会の中でサポート・介護しなければいけない若者の負担も減らすことができると思います。

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異なる専門性を持つメンバーと、同じゴールを目指して走れる楽しさがある

 谷口さんはどうして「医師」というキャリアを選んだのですか?

谷口 父親が心臓外科医だったことが影響していると思います。あと、「患者さんを助ける」医師の役割って悪になりえないし、シンプルに素晴らしいなと。その中で循環器内科医を選んだのは、研修医時代にさまざまな科を回った際に心臓が一番面白い学問だと思ったからです。心疾患の病態は、癌などに比べるとロジックで説明がつきやすく、かつ治療法を自分で考えて組み立てやすいんです。そこに面白さを感じました。

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 医師であり起業家という異色のキャリアですが、起業してみてどうですか?

谷口 会社の立ち上げ、製品リリース、採用など、これまでやったことのなかったことに取り組めているのは貴重な経験になっていますし、医師だと周りが医療者ばかりになるので、幅広い方と出会えるところにも面白さを感じます。起業してよかったなあと思っていますね。ただ、会社のことはいつも頭から離れないし、医師のときよりストレスは大きいです(笑)医療は、緊張感があるものの、それまで専門として学んできたこともあって、ストレスがそこまで大きいということはありませんでした。一方、起業家としてはすべての意思決定を自分でしなければいけないし、正解がわからないので。そういった大変さは日々感じていますね。

 どんなときに喜びを感じますか?

谷口 当社にはエンジニア、テクニカルサポート、バックオフィス、看護師などのメンバーがいるのですが、彼らがそれぞれの専門性を生かしながら同じゴールに向かって進んでいるときには感動しますね。もちろん他の仕事でも経験できる喜びなのかもしれないけれど、スタートアップだと特に実感しやすいのかなと思います。

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「ノウハウよりノウフー」起業家の先輩にいろいろ聞いておくべき

 関西で起業して感じるメリット・デメリットはどんなところですか?

谷口 当社の場合、「大阪大学発ベンチャー」という肩書きは認知してもらう上でのメリットになりましたね。関西は医療領域で素晴らしい企業が多くあるので、「関西の医療系スタートアップ」ということで期待いただけている部分もあるのかなと。一方で、人・モノ・カネはまだまだ東京に集中しているので、苦労するところもあります。

 最後に、起業志望の方へアドバイスをお願いします。

谷口 スタートアップには、特に資本政策面や採用面で難しい決断を迫られることがありますし、いろんなリスクも潜んでいると感じます。痛い目に遭って学べることもある一方で、起こりうるリスクを前もって知っておくことに越したことはないでしょう。起業家の先輩に聞けば、自分たちが苦労してる分きっと教えてくれるはずです。「ノウハウ(Know How)よりノウフー(Know Who)」と言われるように、誰を知っていて誰に聞くかは非常に大切。先輩方の意見もうまく取り入れながら、チャレンジしてください。

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ライター / 倉本 祐美加

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