
いもむしゴロゴロカレー! 昆虫食市場で戦う起業家は、実は昆虫食が苦手な健康オタクだった
株式会社昆虫食のentomo
代表取締役 松井 崇
「起業志望なので、ビジネスプランの相談に乗ってもらいたい」「スタートアップを立ち上げ、ビジネスもある程度は軌道に乗ってきた。次は、資金調達やオープンイノベーションを進めていきたい」など、スタートアップ創業前後での悩みは絶えません。そんな時に、伴走してくれる支援機関があれば心強いですよね。しかし、支援機関を利用したことがなければ最初はハードルを高く感じるものです。そこで、今回は、大阪・うめきた地区に立地する「OSAKA INNOVATION HUB(大阪イノベーションハブ)」の中村さんと石飛さんに実際の支援内容や支援者としての想いなどを伺いました。
ー まず始めに、OSAKA INNOVATION HUB(大阪イノベーションハブ)のご紹介からお願いします。
中村 OSAKA INNOVATION HUB(以下、OIH)は、スタートアップやイノベーション創出の拠点となることを目指して、2013年に大阪市がグランフロント大阪北館内に開設した施設です。大阪市より委託を受けて、大阪産業局が運営しています。資金調達を目指すスタートアップを対象としたピッチイベントを開いたり、スタートアップと大企業やVC間の面談の場を作ったりといった支援をするなど、スタートアップに対してさまざまな機会の提供を行っています。
イノベーション推進部 部長の中村 奈依さん
石飛 これまでは場の提供がメインでしたが、コロナ禍でイベント開催頻度が減ったこともあり、最近ではOIH主導のオンラインイベントも積極的に開催していて、イベント後のフォローアップにもより注力しています。たとえば、ピッチイベントに登壇する前のスタートアップの方とは、「どんな内容が参加者に響きそうか」や「この企業様も参加予定で相性が良いと思うので、面談の場をセッティングしますね。そこではこんな話をしましょう」といった話し合いも行っています。毎日、スタートアップの方との面談、大企業やVCの担当者との打ち合わせに奔走しています。
グローバルネットワーク推進担当の石飛 恵美さん
ー かなり近い距離でスタートアップの相談に乗っているのですね。ビジネスプランが固まっており、これから資金調達のフェーズを迎えるスタートアップが多く利用しているのですか?
中村 そういったフェーズの方もおられますし、起業前で「ビジネスプランを固めるのはこれから」という方も多くおられます。その場合はメンタリングをしてアドバイスをしながら、ビジネスプランのブラッシュアップからサポートさせて頂いております。若手の起業志望の方にもっと積極的に活用してもらいたいですし、学生さんも歓迎ですよ!
石飛 ビジネスプランが固まって起業された方には、スターターピッチの場も用意しています。スターターピッチとは、初のピッチをOIHスタッフの前で行ってフィードバックを受けるものです。他にも、起業のイロハを学べる場の提供、アイデアソンやワークショップなども開催しています。
ー さまざまなステージの方に合った支援を届けておられるのですね。中でも、特に注力している支援があれば教えてください。
石飛 OIHのテーマは「大阪から世界へ」で、グローバル視点に立ったイノベーションが起きるエコシステム構築をミッションとしています。毎年グローバルピッチイベントを開催していて、「GET IN THE RING OSAKA」は、スタートアップが英語でピッチを行い、優勝すれば世界大会出場の権利が得られるという大会で、盛り上がります。グローバルピッチイベントは投資家さんにも注目されていて、出場者の中には半年以内に大きな資金調達をしたスタートアップもあるので、少しはPRのお手伝いができたのではないかと思っています。
中村 スケールを考えると、やはり日本だけでなく世界の市場を視野に入れて事業を展開することが必要なので、海外を見据えるスタートアップは以前より増えたと感じています。一方で、海外である程度実績を積んだスタートアップが日本で市場を広げたい場合もあるので、海外のスタートアップ支援機関とネットワークを作って私たちがハブになり、日本企業に海外スタートアップを知ってもらう場づくりにも注力しています。
ー 拠点の名称通り、“ハブ”という役割を大事にされているのですね。
石飛 それは常に。スタートアップと大企業やVCを繋ぐときも意識しています。「こんなスタートアップに出会いたい」とリクエストを受けたときも、その方が求められていることをきっちりとヒアリングして、合うスタートアップがあれば紹介するようにしています。「繋ぐ」という行為はすごく難しく、慎重に行わなければならないからです。
中村 スタートアップと大企業を引き合わせるとき、“どの部署のどんな方に出てきていただけると、話が進みやすいか”ということは考えます。「御社のこの部門の、この役割を担っている方をご紹介していだだけませんか」などとお願いもしますね。ただ、まだ企業側のニーズの掘り起こしは不十分だと感じています。しっかりとヒアリングできれば、企業側のニーズに合わせたアクセラレータープログラムを提案して、スタートアップを紹介することもできますよね。スタートアップとの協業やオープンイノベーションに興味のある企業は多いので、機会づくりをサポートしていきたいです。
ー 支援者として、関西のスタートアップの特徴をどう感じていますか?
石飛 大企業の本社の数こそ東京にかないませんが、資金力のある有名企業は関西にも多く存在しています。あとは、特定領域の技術に長けた企業も多いので、技術力のあるスタートアップとの間にシナジーも生まれやすいのではないでしょうか。大阪で協業実績を作り、その実績を携えて大企業とオープンイノベーションを進めていく戦略を取るのもいいと思います。また、2025年の大阪万博、それにともなうスマートシティ実現の観点で大阪はとても注目されています。関西展開を考える東京のスタートアップも増えているなど、市場としても魅力的ではないでしょうか。
ー 関西のスタートアップ活性化のためには、京阪神のスタートアップ支援団体間の連携も重要かと思います。
中村 スタートアップ支援団体間のネットワークは以前から構築していますし、2020年7月には京阪神が連携して、スタートアップ・エコシステム拠点都市にも選ばれました。神戸市は医療産業都市ですし、大阪はライフサイエンスや製薬系に強くOIHはグローバル展開支援を得意としています。さらに京都は、京大発ベンチャーに代表されるようなエッジの利いたスタートアップが多いですよね。このように各地域で特性がありますし、支援機関ごとの得意分野も違います。たとえば、OIHに医療系スタートアップが相談に来たら得意とする神戸市の支援機関を紹介する、一方で、グローバル展開を目指す大阪府外のスタートアップにはOIHの提供する機会を積極活用してもらうなど、横で連携して支援できる仕組みを京阪神だけというよりは全国で整備していけたらと思っています。ユニコーン企業の輩出には、全国のスタートアップ・エコシステム拠点都市の連携が必須だからです。
ー 石飛さんと中村さんが感じる支援者としてのやりがいや今後の目標を教えてください。
石飛 この仕事をしていると、最新のテクノロジーに触れる機会も多くて社会の変化や進化を身近に感じられて勉強になります。最先端のビジネスを手掛ける方をサポートするためには、自分自身が日々成長しなければなりません。大変ですが、やりがいがありますね。それに、失敗にクヨクヨせず前向きで、時代に対する順応力を持ったスタートアップの方の姿勢を真似ていきたいと、いつも刺激をもらっています。
中村 どこの支援機関も前例が無い挑戦をする毎日です。答えの無いものを手探りで必死に作っていくことは、難しいけどすごく面白いですね。OIHに来てくれたスタートアップが各社の目指す成功を掴みとってくれたらうれしいですし、その成功をサポートするプラットフォームとして支援の幅を広げていきたいです。
ー 最後に、OIHの皆様からスタートアップの方に伝えたいメッセージはありますか?
中村 どんどんOIHを使ってください!「こんなこと考えてるので、話聞いてもらえませんか?」とラフに来ていただいて大丈夫です!ニーズやお悩みを伺えれば、何かしら情報をお渡しできると思うので。
石飛 OIHと一度タッチポイントを持った後、私たちに定期的に近況を知らせてくれるスタートアップの方もいて。そういった方には、「今度こんなピッチイベントがあって、マッチしそうなので参加してみませんか?」など、こちらからもお役立てできそうな最新の情報を提供しやすいんですよね。1~2行のメールでかまわないので、ときどき連絡をいただけるとすごくうれしいです!
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ライター / 倉本 祐美加