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INTERVIEW

情報テクノロジーが生活の中に自然に溶け込む環境を目指して。木製のスマートデバイスに込めた想い

mui Lab株式会社
代表取締役 大木 和典

    気付けばいつもスマートフォンを眺めがち。どんな情報もすぐに得られるようになった一方で、情報受信疲れを感じている人は、かなり多いように思います。もっと最適な距離感で情報と付き合えたら...。そんな願いを叶えてくれるのが、普段はインテリアとして、必要なときだけ情報表示デバイスとして機能する「mui(ムイ)」というプロダクトです。muiを開発した、mui Lab(ムイラボ)株式会社の代表取締役である大木さんに、プロダクトのこだわりや起業経緯などについてお話を伺いました。

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    必要なときにだけ現れる、木製のスマートデバイス

     まずは事業内容について教えてください。

    大木 私たちmui Labは、人とテクノロジーと自然が調和した環境の構築を目指していて、そのファーストプロダクトとして「mui(ムイ)」を開発しました。製品名にもサービス名にもある「mui」の由来は、老子の説いた生き方「無為自然」から。「無為」は「人の手を加えず、あるがままにまかせること」といった意味合いですが、その考え方を現代のライフスタイルに取り入れて、情報テクノロジーが生活の中にスッと自然に溶け込むようなプロダクトを開発しているんです。この開発に対するアプローチを、「Calm Technology(カーム・テクノロジー)」の考えを取り入れながら進めてきました。

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    木製のスマートデバイス「mui」

     「mui」は、どんなプロダクトなのですか?

    大木 木製インターフェースのスマートデバイスです。一見、ただの木のインテリアですが、触れるとディスプレイが現れ、時刻や天気予報の表示、照明など家電の操作、メッセージのやり取りなどを行うことができます。操作が終わったら、ディスプレイが消えてまた空間に溶け込みます。実証実験中ですが、もうすぐラジオを聴けるようにもなります。ラジオの空気感とmuiは相性もいいんですよ。

     普段はそっとインテリアのように佇んでいるものの、さまざまな情報との接点になるものということですね。

    大木 今は、スマートフォンにさまざまな機能が集約されています。けれど、天気予報を確認するためにスマートフォンを開いたのにSNSを見てしまうなど、別の情報にどんどん注意を取られてしまうことってありますよね。それに、各々がスマホばかり見ていたら、家族で共有できる時間はどうしても少なくなってしまいます。家で家族と過ごす時間って、不合理で非生産的な活動も多い。だけど、大人になって振り返ったときに大事な記憶として残っているのは、そういった何気ない日々だったりしますよね。情報やテクノロジーに注意を向けすぎず、家族とのコミュニケーションを大事にしてもらいたい、という思いも持っています。

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    新たな暮らしの形を体感できるサードプレイス「夷川サローネ」

    「カームテクノロジー」によってモノ・サービスづくりに貢献したい

     muiに木を用いたのはどうしてですか?

    大木 最初は布なども含めてさまざまな素材を使って試していたんですが、実際に触ってもらう中で一番ユーザーの興味を引いたのが木だったんです。ただ、ディスプレイ表示やコンピュータの搭載など、ものづくりの視点で考えたときに木が素材になることはエンジニアにとってハードルが高くて。「本当に木じゃないといけないのか」を議論するために、飛騨の山で合宿を行って、林業等に関わるさまざまな方にお話を伺いました。その中で、木が愛される一番の理由が見た目、その次に手触りだと知って。見た目と手触りって、muiのような情報表示デバイスにものすごくかかわりの大きい要素でしょう。改めて木との相性の良さをメンバーみんなが実感できたため、今の形になりました。

     今後の展望を教えてください。

    大木 muiに関しては、muiに興味を持って使ってくれた方が「いいよ」と言ってくれて、それがコミュニティになり、どんどんその輪が広がっていくような愛されるプロダクトになればいいなと思います。muiが目立つ一方で、企業としてはBtoBのビジネスにも多く携わっているので、カームテクノロジーというソリューション提供をこれからも進めていきたいです。「mui Labが情報設計やデザインに携わってくれたら、モノやサービスが穏やかになるよね」と言ってもらえたら理想ですね。

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    悩んだときに頼りになるのは、一歩先を行く先輩経営者

     起業の経緯について教えてください。

    大木 起業するまでは、新卒で入社したNISSHA株式会社にずっと勤めていました。その中でアメリカに6年ほど行く機会があって、うち3年は新規事業開発に携わっていたのですが、その中で生まれたのがmuiでした。思い入れが強く可能性の広がりも感じたので、社内ベンチャー企業として設立したんです。その後、採用やファイナンスの兼ね合い、より早い意思決定を行うためにも、MBOにより独立しました。

     大企業の社内ベンチャーから独立、というのは環境的にも変化があったかと思いますが、どんなことが大変でしたか?

    大木 企業に勤めていると、ありがたいことに毎月決まった金額のお給料が振り込まれます。けれど、独立してからは資金調達もしくはただちに売り上げを上げなければファイナンスが回らないというドキドキ感に常に晒されていて、いつも頭の片隅に銀行口座の残高がよぎりますね。特に2020年の前半は、コロナによりキャンセルになってしまったプロジェクトもあったので苦しかったです。悩んだときは、経営者の会などで出会った先輩経営者の方に相談します。うちよりもステージの進んだ企業の経営者の方とお話しすると、たくさんヒントをいただけます。

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     経営する上では、どんなことを大事にされていますか?

    大木 フラットであることですね。役職者だからといって、特権は付けません。もちろん私も、トイレ掃除やゴミ捨てをします。私は「こうしなさい」「こうしよう」と声を上げて旗を振るタイプではないんです。私がぼそっとつぶやいているのを聞いて、メンバーが私の考えや意図を汲んで、自主的に動いてくれることが多い気がします。

    どのように社会を良くしていきたいのかを考え、必要なステップを踏んで起業を

     関西で起業してよかったと思うことはありますか?

    大木 京都はいくつかベンチャーキャピタルもあるので、資金面でも「京都発のスタートアップを支援したい」という気持ちの面でも、サポート体制が整っていると思います。数が少ないから目立てるというメリットもありますし。あとは、東京に比べて「職住近接」が実現しやすいところも魅力です。うちの社員も、みんな自転車通勤をしていますよ。

     最後に、これから関西で起業をしようとしている方に向けてメッセージをお願いします。

    大木 起業するなら早い方がカッコいい、ということはありません。私も、大企業内で事業立ち上げやグローバルビジネスに関わった経験が大きく活きています。起業することそのものを目標にするのではなく、どんな風に社会をより良くしていきたいのかを考えた上で、必要なステップを踏んでいけばいいのではないでしょうか。

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    チャレサポ面談
    writer_kuramoto

    ライター

    倉本 祐美加

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