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株式会社ミライロ

代表取締役社長 垣内 俊哉

障害者手帳のデジタル化を実現し、日本のユニバーサルデザインを先導!設立11年目の組織を率いる起業家

2010年に大阪で設立した株式会社ミライロ。障害を価値に変える「バリアバリュー」の視点から、高齢者、障害者などの多様な方を対象としたユニバーサルデザインに取り組んでおり、「ハード(環境)」「ハート(意識)」「情報」の3つの軸からソリューションを提供しています。「私自身、先天性の骨の病気があって。歩きたい、障害を克服したいと思っていたけれど叶わなかった。そのときに、どうすれば自分のことを受け入れられるか、好きになれるかと考えて。何かしなければと思ったのが起業の入り口でした」と語るのは代表取締役社長の垣内さん。現在、ミライロが注力している事業や経営者としての考えを伺いました。

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障害者手帳のデジタル化を実現した「ミライロID」

 ミライロは「バリアバリュー」という企業理念に基づいて複数の事業を展開していますが、特に注力している事業について教えてください。

垣内 現在、特に注力している事業は2つです。1つは障害者・高齢者との接し方やサポートの方法をレクチャーする「ユニバーサルマナー検定」の実施です。自治体・企業・学校などさまざまな場所でニーズが増えており、国内でのべ10万人の方が検定を受講してくださっています。もう1つが障害者手帳を所有している方を対象としたスマートフォン向けアプリ「ミライロID」です。障害者手帳を提示すれば公共機関や商業施設で割引が受けられますが、これまでは現物提示が必須でした。そのデジタル化の手段として開発したのが、2019年7月にリリースしたミライロIDです。現在では1400社以上に導入いただき、2021年3月からは120社の鉄道会社で利用できるようになるなど利便性が高まっています。普及する過程では、鉄道会社やバス・タクシーの事業者、映画館や美術館を運営する企業など400~500社宛に手書きのお手紙を送りました。思いが伝わり、その輪が広がってここまで来ることができたのかなと思います。

 コロナ禍では、事業にどのような影響がありましたか?

垣内 障害のある方の多くが基礎疾患をお持ちであるため、感染リスクを考えるとコロナ禍での外出機会は減少します。街で障害者を見掛ける機会が少なくなることで、自治体や企業にとってのバリアフリーやユニバーサルマナーの優先度が下がってしまうのではないかと心配していました。しかし、「この時期だからこそ受講して、コロナ禍が明けたときにしっかり生かしたい」と多くの接客業の方がユニバーサルマナー検定を受講してくださるなど、世間のバリアフリーやユニバーサルマナーへの意識の高まりが続いていることを実感しています。また、多くの企業でリモートワークが主流となったことで、これまで通勤が重荷となっていた障害のある社員の方の負担も軽減されたため、今後は世の中でさらに障害者雇用が広がっていくだろうと確信しています。

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「継続できないなら、責任を全うできないなら」事業を撤退する決断も大事

 起業当初から事業は順調でしたか?

垣内 いえ、創業から5年間はほぼ売上が無く、夜行バスに乗って大阪から東京まで営業活動に駆け回る日々でした。門前払いされることは無く、「バリアフリーは必要だよね」と共感はしていただけたものの、そこに投資する自治体や企業は多くありませんでした。流れが変わったのは、2013年9月に東京オリンピック・パラリンピックの開催が決定したこと。そのタイミングから、「バリアフリーに本腰を入れて取り組まなければならない」という社会的な機運が高まり、多くの自治体や企業が投資をするようになったのです。

 事業を続けてきた中で、どんなことが大変でしたか?

垣内 障害のある子どもの家庭教育をサポートする事業から撤退すると決断したことです。その事業を始めた背景は、院内学級では先生の数が少なくて充分な学習のフォローができず、退院して学校に戻ってから「勉強に付いていけない」と悩む子どもが多かったことからです。私たちが教育の専門スキルを持った者を病院に派遣して無償で勉強を教え、退院時に「この先生にこれからも教えてほしい」と要望されれば個別契約を行うという事業を運営していたのです。非常に多くのご家庭から支持いただけた事業でしたが、事業自体は大きな赤字。融資も受けられない状況でした。そのときに、「いつ倒産してもおかしくない状況でこの事業を続けて、サービスを利用してくれる子どもたちやご家族の人生に最後まで責任を持てるのか」と立ち止まって考えると、難しいなと。だから、辞める決断をしました。社会的に良いことや人から求められるものであっても、継続できないものや責任を全うできないことは辞めるという決断も、時には重要だと実感しました。当時、「こうした事業にはきちんと利益を出せるようになってから戻ってこよう」と副代表の民野と強く誓っていました。そしてようやく、一昨年にミライロIDのリリース、昨年にミライロ初となる店舗「ミライロハウス」のオープンに至ることができました。

 今後のビジョンを教えてください。

垣内 現在のミライロIDは障害者手帳の代替手段にしか過ぎませんが、今後はミライロID上でチケットの予約や新幹線の座席指定もできるようにしていきたいと考えています。ミライロID上でできることを増やしながら、障害者の生活におけるDXを当社が先導していきたいです。また、日本はバリアフリー先進国であるため、2025年開催の大阪万博において世界中の方に「日本には、こんなにいいソリューションがあるんだ!」と披露できればと思いますし、今後は海外にもソリューションを提供していきたいです。

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人数が増えても、社員と「仕事だけの関係にならない」ように意識

 現在ミライロには50名以上の社員の方がいますが、採用の上で大事にしていることを教えてください。

垣内 メンバーの多様性とバランスです。「ひっつき虫」として有名なオナモミという植物は、パカッと割ると2つの種子が出てくるんです。1つは早めに発芽する種子、もう1つは遅めに発芽する種子なんですね。なぜそうなっているかと言うと、除草剤が蒔かれる、土が掘り起こされる、雨が降るといった、有事に備えたリスク分散のため。組織も同じで、必ずしもスピーディーに仕事ができる人だけを集めてもうまくいくわけではないし、話が上手な人や戦略立案に長けている人だけを揃えればいいわけでもない。モチベーションについても、社会貢献意欲の高いメンバーがいる一方で、「しっかりと事業で儲けていくんだ」という思いが強いメンバーもいた方がいい。そう思って、メンバーの多様性とバランスを意識し始めてから、自然と組織がまとまるようになりました。

 社員の方と接するうえで意識していることはありますか?

垣内 ごはんを食べたり旅行に行ったり、一緒にスポーツやコンサート観戦をしたり、コロナ禍ではオンラインで繋いでゲームをするなど、ともに「食う・寝る・遊ぶ」時間を大切にすることです。お互いが仕事だけの関係にならないようにというのは常に意識しています。「人間関係・やりがい・お金」のうち、2つが欠けると社員は辞めてしまうんです。当社では社会貢献を実感できる事業に携われるので、やりがいは感じられると思います。一方で、創業から数年は支払うことのできる給与も低かった。だからこそ、皆で楽しく仕事を頑張ることのできる人間関係の形成を大切にしてきたんです。それは今でも変わりません。

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起業も経営も、準備がすべて

 関西で起業して感じるメリットを教えてください。

垣内 関西の企業は、「本当に、自社にとって価値のあるもの」にしか投資しないシビアな目を持っているからこそ、営業トークが洗練されました。関西で鍛えてもらったからこそ、東京進出も順調に進んだのだと思います。大阪は日本で初めて地下鉄にエレベーターを設置したバリアフリー先進地でもあるため、今後も大阪に本社を置いて全国や世界へ発信していきたいです。

 起業を志す方にメッセージをお願いします。

垣内 起業して10年以上事業を続けてこられた理由を考えてみると、究極的には全部準備したからだと思います。たとえば営業に行くときも、その企業の設立年や創業ストーリー、最近のトピックなどをしっかり調べました。また、相手から1秒も無駄な時間を奪わないように、当社では「えー」「まあ」「あの」「その」などの言葉を一切言わないように徹底しています。伝えたいことが決まっていれば、そういった言葉は出てこないはずですから。準備をしてきたからこそ、仕事もいただけたしご縁もいただけたし信頼も置いていただけた。起業や事業継続にあたっては準備がすべてだと思います。

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ライター / 倉本 祐美加

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