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株式会社IDEABLE WORKS

代表取締役 寺本 大修

「アーティストが夢を諦めない社会に。」アーティストとファンの新しい関係性を作る、異色キャリアの起業家

海外に比べると日本は、アーティストと気軽に出会える環境も少なく、投げ銭文化にもまだ馴染みが薄いかもしれません。しかし、アーティストとファンが密接にコミュニケーションを取ることができて、ファンが気軽にアーティストを応援できる仕組みが、日本にも生まれています。サービスの名は「HACKK TAG」で、大阪のスタートアップである株式会社IDEABLE WORKSが提供しています。異色のキャリアの持ち主でもある代表取締役の寺本さんに、この事業を行う理由やビジョン、起業後のエピソードなどを伺いました。

01

ファンとアーティストが繋がりを持てる、サブスク型クラウドファンディングを運営

 まずは事業内容について教えてください。

寺本 画家を中心としたアーティストのためのクラウドファンディングサービス「HACKK TAG」の企画・運営を行っています。通常のクラウドファンディングはスポット支援ですが、当社のサービスは、会員制パトロンサービスとして月額固定の支援金をアーティストに提供するサブスク型であることが大きな特徴です。

02

 なぜ、そのようなサービスを始めようと思ったのですか?

寺本 私は、家業で箔押し印刷の企画や製造を担う、株式会社T WORKSの取締役も務めています。T WORKSでは、アーティストと協力して箔押し美術加工技術を活かした商品の企画・制作も行いました。作品はとても好評で、アーテイストの方からも「次回があれば参加させてください」と反響があるなど大成功でした。しかし、こだわっていいものを作ろうとすれば作るほど、販売価格をコストが上回ってしまう事態になり、続けることが出来なくなってしまいました。その経験から、ものづくりの難しさを感じると同時に、“大量生産し安価で販売”という現代の流通網以外の道を見つけなければと感じました。そこで、ものを販売するには、つくる人と欲しい人が密接に交わることのできる関係性と、アーティストが作品を販売してファンが納得する金額で買える小さなコミュニティづくりが必要だと感じ、サービスを立ち上げることにしました。

 パトロンになると、どのようなサービスを受けられるのですか?

寺本 まずは、アーティストとパトロン限定のクローズドチャットに入ることができます。また、アーティストが自分の作品や思いについて話すラジオ番組も聞くことができます。今後は、ラジオ番組を通してファンと意見交換をしながら、オリジナルアイテムを開発します。目指すのは、密接な関係性づくりによって1人のアーティストに熱量のある100人のパトロンが付くようなサービスです。アーティスト同士がコラボしたラジオ番組の配信やコラボグッズの発売によって、パトロンの方がさまざまなアーティストを知るきっかけにもなればと思っています。

03

アーティストが夢を諦めなくていい社会をつくりたい

 今はどんなことに注力されていますか?

寺本 アーティストをマネジメントする仕組みづくりです。今は僕がすべての準備や対応をしていますが、1人でマネジメントできる数には限界があるので、 資金調達を行ってシステムを構築する予定です。ブロックチェーン技術を取り入れて、パトロンが自主的かつ献身的にアーティストを支援できる、ファン行動の民主化の流れを生むシステムをつくろうと思っています。もう一つ、注力していきたいのが「HACKK TAG」のブランド化です。「HACKK TAG」に参加するアーティストの、“自立と、社会に価値を還元する公益性”の証明となるような、そんなブランドに育てていければと思っています。

 事業に懸ける思いや将来のビジョンを教えてください。

寺本 「HACKK TAG」に参加するアーティストは、画家を中心に集めています。最終的には多様な領域の才能を支援していくサービスにしていきたいですが、例えばミュージシャンやイラストレーターの方々の多くは、動画配信サービスや、ファンコミュニティサービスなど、作品披露の場やファンとの接点が取りやすい環境にあると思うんです。一方で、画家の方はより職人気質で商売が苦手な方も多く、披露の場も少ない。結果的に夢を諦める人もかなり多いと思っています。アーティストの方は、代替できない特殊な才能を持っている方たちです。彼らが夢を諦めないで済むための、一助になるような活動ができればと思っています。

04

いい相乗効果を生んでいる、大学・家業・自分の事業の三足のわらじ

 起業に至るまで、どのようなキャリアを歩んでこられましたか。

寺本 大手インフラ会社からキャリアがスタートして、次は母校の近畿大学に転職しました。転職後は、学生起業支援プログラムを立ち上げて起業家を輩出するための講座やメンタリング等を実施しています。また、2018年12月には父親が急逝し、後継ぎとして家業の会社の取締役になりました。学生起業支援をする中で、自分自身の想いで挑戦する学生を見て「自分もチャレンジャーになりたい」と背中を押され、さらに起業しました。その結果、今は大学・家業・IDEABLE WORKSの三足のわらじを履いています。時間の創出は大変ではあるものの、大学で出会った方と一緒に仕事をしたり家業での経験を今の事業に活かしたりと、相乗効果が生まれていて、いいバランスで働けていると思います。

 起業してみて、どんなやりがいや苦労を感じておられますか?

寺本 すごく責任とプレッシャーは感じるようになりました。大手インフラ会社で新規事業開発に携わっていたのでビジネスをつくる経験はあったのですが、当時は上司も部長も社長も上にいる環境。つまり、失敗しても責任を取るのは自分ではないという守られた状態でした。起業すると、責任はすべて自分にあります。最初に数十人のパトロンの方がサービスに参加してくださったとき、喜んだのも束の間、「これからこの人たちに価値を提供していかないといけない」というプレッシャーを感じたんです。今後サービスが広がれば広がるほど、その責任感は大きくなると思います。

05

まずは行動。行動すれば周りからの見られ方も変わる

 大阪で起業するにあたって活用した制度などはありますか?

寺本 「OIHシードアクセラレーションプログラム(OSAP)」に選出されて、メンタリングを受けたりVCの方と面談の機会をいただいたりしました。同期は僕より先のフェーズを行くスタートアップの経営者ばかりなので、事業の進め方や補助金や制度などの情報も参考にさせてもらっています。順調に成長しているように見える企業も、お話を伺うといろんな苦労や悩みがあることを知って、その度に自分ももっと頑張ろうと思わせてもらっています。

 最後に、起業志望の方へメッセージをいただけますか。

寺本 仏教に「身口意(しんくい)」という言葉があります。身は行動すること、口は言うこと、意は思うことです。普通は、まず思いを持って、周りに言ってから行動しがちですが、私は逆で漢字の並ぶ順番通りに過ごそうと心掛けています。というのも、OSAPで初めてVCと面談をした際、事業構想を説明したときは全然VCに響かなくて悔しい思いをしました。そこで、「まずは行動だ」と、2週間後にサービスの実証実験のイベントを開催したのです。その後のVC面談の際にその結果を話したところ、相手の反応や受ける質問の内容が明らかに変わりました。「この数週間でここまでやったんですか?」とも驚かれました。やはり、まずは行動です。今すぐに踏み出すことのできる一歩目を描くところから始めてみてはいかがでしょうか。

06

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ライター / 倉本 祐美加

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