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INTERVIEW

いもむしゴロゴロカレー! 昆虫食市場で戦う起業家は、実は昆虫食が苦手な健康オタクだった

株式会社昆虫食のentomo
代表取締役 松井 崇

    昆虫は捕まえたり育てたりするものであり、食べるものではない。そう思われているかもしれません。しかし、2020年、いもむしゴロゴロカレー」というインパクト絶大のカレーが生まれようとしています。話題性狙いのものではありません。人間の体にとって、自然であり健康な食べ物を追求した結果、開発された商品です。どんな経緯から「いもむしゴロゴロカレー」にたどり着いたのか、昆虫食の製造販売や食育事業を行う、株式会社昆虫食のentomo代表取締役の松井崇さんにお話を伺いました。

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    おいしさと栄養価を残すため、あえて「粉末」ではなく「ゴロゴロ」を選ぶ

     まずは事業内容を教えてください。

    松井 「人類誕生から700万年。現代人が失った野生を取り戻す製品・サービスを提供する。まずは人類が猿の時代から食べてきた最高の肉『昆虫食』の普及から」というミッションのもと、昆虫食の製造販売、養殖、教育・食育などの事業を展開しています。現在、開発中の新製品が「いもむしゴロゴロカレー」です。1人分あたりに噛みごたえのある芋虫が5〜6匹入った、手軽に食べられるレトルトカレーで、牛脂や小麦粉、化学調味料など余計なものを使用していないので、たくさん食べても胸やけは起きません。カレー以外にも、「体に自然な食べ物を提供したい」という理念のもと、商品を開発しています。

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     昆虫食は耳にしたことがあるものの、「ゴロゴロ」入っていると聞くと抵抗を抱く方もいるのではないかと思います。なぜ、あえて芋虫そのままの形や食感を残したのでしょうか?

    松井 確かに、「粉末にして入っていたら食べやすいのに…」と思われるかもしれません。実際、昆虫食業界では、昆虫そのままではなく昆虫粉末にして料理に入れることが多いのも事実です。私も、粉末にすることが味や栄養の面でベストなら、粉末を選んでいました。しかし、昆虫は食感や成分がエビやカニに近いと言われていますが、エビやカニの粉末が入ったクッキーやパンやプロテインバーってほとんど聞いたことがないですよね?つまりは、粉末にするよりもそのまま食べた方が、食感も楽しめておいしいということです。だからこそ、見た目の抵抗感を下げるためだけに、粉末にすることは選びませんでした。

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    昆虫は苦手、昆虫食への偏見もあった。健康食を突き詰める中で捉え方が変化

     そもそも、なぜ昆虫食の事業を始めたのですか?

    松井 「昆虫好きの人なのかな?」と思われるかもしれませんが、むしろ昆虫は苦手でしたし、多くの方と同じように昆虫食に偏見を持っていました。そんな私がなぜ昆虫食に興味を持ったかというと、健康に良い食事を突き詰めていった結果です。4年前に体を壊したことをきっかけに食事を見直すようになり、ビーガンやスローフードなどを試しました。その中で一番効果があったのが、糖質制限や肉の摂取だったので、毎日1キロ程度の肉を食べていたんです。けれど、肉は小魚などと違ってまるごと食べることはできず、摂取できる栄養分が限られる。それに、安く流通しているお肉は成長ホルモンを投与されているものもあり、たくさん食べることが健康にいいのかどうかがわからないという不安もありました。一方、小魚や小エビはまるごと食べられますが、水銀などの重金属汚染のリスクが少なからずあることも悩みでした。そんな背景から、肉に代用できる食材を考える中で見つけたのが昆虫だったのです。

     実際にご自身で糖質制限や肉の摂取に挑戦した上で、昆虫に辿り着いたのですね

    松井 研究を進めると、昆虫は高タンパク質で食物繊維も豊富であること、類人猿の時代から食べられてきたこと、国連も推奨していることを知って、昆虫食に大きな可能性を感じました。現在、昆虫は自然の中での採集がメインで人件費などが掛かるためまだまだ高価ですが、養殖による大量生産が進めば、安価になり手軽に食べやすくなるはず。つまり、経済合理性さえ生まれれば、昆虫食はまた食事の選択肢に加わると思い、「美味くて安くて食べやすい昆虫食を広げたい!」と起業をしたのです。だからこそ、昆虫の養殖に挑戦したり、食育のワークショップを行ったり、昆虫食シンポジウムで講演したり、学会発表をしたりと、普及活動にも力を入れています。

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    昆虫食を「次世代タンパク」として扱う人は、関西でほぼいなかった

     起業してよかったことはありますか?

    松井 まずは、出会いに恵まれたことです。東大阪大学短期大学部の松井欣也教授とともに産学連携で商品開発を進めているのですが、同じビジョンを持つ方にサポートしていただけるのは心強いですし、大きな厨房など恵まれた施設を使わせていただけることもありがたいですね。産学連携でのプロジェクトということで周囲からの信用も得られやすいため、講演にもよく呼んでいただけるのだと思います。

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     関西で起業してよかったことはありますか?

    松井 自分が「次世代タンパクとしての昆虫食」の先駆者となって活動できた点は良かったと思います。関西は東京と比べると、昆虫食のイベントや普及活動、昆虫食を食べる機会の場が圧倒的に少なかったんです。だから、起業後は1年半で30回以上のイベントを開催しました。また、大阪府や大阪市はスタートアップへの支援に積極的なので、いろいろと利用できる制度もあって助かります。東京の方が市場も機会も大きいかもしれませんが、リモート会議も進み距離の壁が無くなってきているので、今後は地方で豊かに暮らしながら起業する方も増えるのではないでしょうか。

    世界100億人の食文化をより豊かにするために、自分が信じる商品を追求したい

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     今後のビジョンを教えていただけますか。

    松井 「今日は牛肉にする?豚肉にする?それとも昆虫にする?」と言われるくらい、昆虫が当たり前に食の選択肢に入るよう普及していきたいですし、そのきっかけとなる食品を開発製造していきたいです。と言いつつも、昆虫食にこだわっているわけではありません。entomoのビジョンは、「世界100億人の食文化がより豊かに 先進国では健康増進、途上国では栄養改善」。現段階では手段の一つとして昆虫がすぐれていると思っているから扱っているだけなので、体にいいものや科学的にも証明されたすぐれた食材があれば、それらも取り扱いながらビジョンの実現を目指していきます。

     最後に、これから地方で起業をしようとしている人に向けてメッセージをお願いします。

    松井 昔と比べると、起業のコストやリスクは無いに等しいです。店舗が無くても商品やサービスを販売できますし、広告もSNSを使えばコストをぐっと抑えられるため、挑戦がしやすいはずです。私は商品開発において、「自分が食べたいと思うものしか作らないし、おいしいと思うものしか販売しない」ということを大事にしています。まずは自分が欲しいとか必要だと思える商品やサービスを、信念を持って生み出すことからチャレンジしてみてもいいかもしれません。

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    チャレサポ面談
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    ライター

    倉本 祐美加

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