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INTERVIEW

度数可変眼鏡を開発し、視力に悩みを抱える人をサポート!二人三脚で歩む阪大発スタートアップ

株式会社エルシオ
代表取締役 澁谷 義一 / 李 蕣里

    「視覚から得られる情報は8割以上」と言われるほど、目はとても重要な器官。だからこそ視界がボヤけ対象がよく見えないと、ストレスを感じます。眼鏡やコンタクトの装着で問題解決できるケースがある一方、重い精神的・金銭的負担を感じながら目の治療を続けている方もいます。そうした視力にお困りの方をサポートする度数可変眼鏡を開発しているのが、株式会社エルシオです。代表取締役社長である澁谷さんと、共同創業者の代表取締役副社長の李さんに、創業の経緯や二人三脚で歩み続けて来られた理由についてお話を伺いました。

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    代表取締役社長 CEO/CTO 澁谷 義一さん(左) 代表取締役副社長 COO 李 蕣里さん(右)

    視力に悩みを抱える方に役立つ、度数可変眼鏡を開発中

     まずは事業内容について教えてください。

    澁谷 私たちエルシオは、「​世界中の人々の一生に寄り添って、ライフワークをサポートする」を理念に、度数可変眼鏡「Elcyo Glasses(エルシオグラス)」の開発を行っている、大阪大学発のスタートアップ企業です。エルシオグラスは、独自開発した「フレネル液晶レンズ」に電圧を加えることによって、度数を変化させることができます。この技術を磨いて、世界中の小児弱視でお悩みのお子さんや老眼の方の視力をサポートしたいと思い、開発を進めています。

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     この事業を始めたのは、どんなきっかけからだったのですか?

    澁谷 勤めていた企業を早期退職し、大阪大学に移って液晶レンズの研究を進めていたときに、視力にお悩みを抱えるさまざまな方のお話を聞かせていただいたことがきっかけです。とある方は、白内障のため眼内レンズを装着されていました。眼内レンズは焦点調整ができないため、複数の眼鏡を購入する必要があるんです。だから「度数可変眼鏡を作ってくれると助かる」と言ってくれました。また、われわれは阪大発スタートアップということで阪大病院とも連携させていただいているのですが、小児弱視のお子様を持つご家族にインタビューさせてもらう機会もあって、彼らの悩みも知ったのです。

     小児弱視のお子様を持つご家族は、どんなことに悩んでおられたのですか?

    澁谷 小児弱視は、視機能の発達が途中で止まってしまうことなのですが、治療をするためには目を使って発達させる訓練が必要になります。ときにはアイパッチという目を隠す道具で、見えやすい片目を隠して、見えづらい方の目を使わせるという訓練もするのですが、それは子どもにとってすごく苦痛ですよね。また、小児弱視のお子さんは一日ごとに見え方が違うケースもあるなど視力が変わりやすいので、眼鏡を何本も購入しないといけなくて、金銭的負担も大きいのです。度数可変眼鏡を開発できれば、そういった悩みを解決できるのではないかと思いました。

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    将来的には、認知症の早期発見を可能にする度数可変眼鏡の開発も目指す

     現在は度数可変眼鏡の開発過程とのことですが、どんなところに難しさを感じていますか?

    澁谷 従来の液晶レンズ口径は直径2〜3mm程度でしたが、研究を進めることによってレンズの大口径化は実現できることがわかりました。ただ、まだレンズ全体で綺麗に対象を見ることはまだ難しく、レンズの画質が十分ではありません。阪大のベンチャー・事業化支援室にもサポートいただき、ここ数ヶ月でようやく体制や設備が整ってきました。眼鏡用レンズ設計の最適化のために、必要なツールも導入できたので、ここから試作を重ねて、2021年の秋ごろには完成させたいと思います。

     今後の展望を教えてください。

    澁谷 まず直近の目標としては、度数可変の老眼鏡のプロトタイプを完成させたいです。小児弱視用の度数可変眼鏡は、医療用のため臨床研究なども必要なので、医師にもご協力いただきながら並行して開発を進めていきたいです。将来的には、見る対象に合わせて自動的に度数が変わるオートフォーカス眼鏡に、AIを導入して、目に関する生体データを収集・解析し、認知症の予防や診断を可能にしたいと考えています。

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    自分たちの技術に大きな可能性を感じ、同じビジョンを目指す共同創業者

     起業の経緯について教えてください。

    澁谷 メーカーに研究職として勤務していて、「技術で人の役に立ちたい」とずっと思っていました。液晶素子の新しい応用の研究をしていたのですが、研究予算の縮小によりその企業では研究を続けられなくなったんです。でも諦めきれなかったので、早期退職をして阪大の研究室に来ました。阪大は大学の技術を実用化する気運が高く、周りには熱の出ない白熱電球などさまざまな分野で起業される先輩がいたり、事業化をサポートしてくれるようなプログラムがあったりして、刺激を受けました。そして、当時ドクターコースに在籍していた李と出会い、彼女と同じビジョンを分かち合い、共同で起業しました。今は事業開発のほぼすべてを、彼女がサポートしてくれています。

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     二人で事業を進める中で、対立することなどはありませんか?

     お互いに譲れない部分があるので、開発の方針やターゲット選定など、あらゆることで毎日のように喧嘩をしますよ(笑)けれど、「視力にお困りの人の役に立ちたい」という思いやビジョンは同じなので、最終的にはそこに至るために何がベストかを考えて話はまとまっていきます。

     同じビジョンを描ける、心強いパートナーがいることは起業においてとても大切な要素だと感じます。

     私は、澁谷の諦めない姿勢をすごく尊敬しています。開発過程でうまくいかないことはたくさんあるけれど、「絶対に実現するんだ」と決めて努力している姿を見ると、私も頑張らなければと思うんです。それに、周りの方をすごく大事にされる方なので、自分のパフォーマンスで恩返ししたいなという気持ちに自然となります。まだ開発途中ですが、どんどん改良されてきているし、課題が見つかっても、該当の専門分野を持つ阪大の先生方にも助けていただきながら解決できているので、このまま続けていけば構想が形になると確信しています。

    澁谷 「どうしてもこれをやりたい」という思いが強ければ強いほど、同じベクトルを向いたパートナーや仲間が次々と集まってきてくれると感じています。会社員時代はいろんな制約があって思い通りの開発ができず、不完全燃焼感がありました。今は、困っている人の役に立ち、より良い未来を生み出せる新しいプロダクト開発に能動的に携われているので、毎日がとてもエキサイティングです。

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    人生は一度きり、悔いの無い選択と行動を

     メディアへの露出やイベントへの登壇など、広報活動はどのような方針で行われていますか?

     「研究内容を外に出したくない」と広報活動を極力控える企業もありますが、当社は開発フェーズに応じて行っています。なぜなら、液晶レンズ単体でも販売して、VR/ARゴーグルや調光・配光機能を持つ照明器具、カメラモジュールなどに組み込んで利用していただきたいと思っているため、いいパートナーを見つけるには展示会などに出ることも必要だからです。それにメディアで取り上げていただくと、協力していただける方が増えますし、普段からサポートしていただいている方にも自社の頑張りが届きやすいと思います。

     これから採用したい人材はいますか?

     オートフォーカスの開発や機械学習に詳しい方など、フルタイムで研究開発に携わっていただける方を採用したいです。本製品の開発を推進するための専門スキルを持つ研究者・技術者ですね。また、ビジネス人材も必要としていて、財務を主導できる方やマーケティングを専門とされてきた方に仲間に加わっていただけると心強いですね。

     最後に、これから関西で起業をしようとしている方に向けてメッセージをお願いします。

    澁谷 大きな組織になればなるほど、自分のやりたいことがやれるようになるまでに長い順番待ちが必要になることもあります。そんなときは、もっと早く登れる別の道を探ったり、従来とは違った方向で夢を追いかけたりしてもいいのではないでしょうか。人生は一度しかありません。不完全燃焼のままではもったいないので、チャンスを逃さず、悔いが残らないような選択と行動を常に心がけてください。

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    チャレサポ面談
    writer_kuramoto

    ライター

    倉本 祐美加

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