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一般社団法人 京都知恵産業創造の森

スタートアップ推進部 川口 高司 / 田中 翔太

「オール京都」で起業家を生み育てる!京都スタートアップエコシステムの推進役が目指す「スタートアップの都」とは?

多くの名だたるものづくり企業が本社を構えており、かつては「ベンチャーの都」と呼ばれていた京都。2020年7月に大阪・神戸と連携し、「京阪神」として内閣府のスタートアップ・エコシステム拠点都市「グローバル拠点都市」に選ばれたことで、「スタートアップの都」を目指した動きが盛り上がっています。行政、経済団体、産業支援機関、大学、金融機関等が一体となり、オール京都で起業家を生み育てる環境を整備しようと始まった「京都スタートアップエコシステム」の取り組みの中で、調整役であり繋ぎ役を担うのが、一般社団法人京都知恵産業創造の森のスタートアップ推進部です。今回は、スタートアップ推進部の川口さんと田中さんに手掛ける支援内容や支援者としての想いなどを伺いました。

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スタートアップ推進部 次長 川口 高司さん(左)/ スタートアップ推進部 主査 田中 翔太さん(右)

現在は、プレシード期やシード期のスタートアップ支援に注力

 まず始めに、一般社団法人京都知恵産業創造の森(以下、知恵森)のご紹介からお願いします。

田中 知恵森は、京都・四条烏丸にある「京都経済センター」に集まる産業支援機関や経済団体の調整役として設立されました。設立当初から、産学公連携の支援やスマート社会の推進、産業人材の育成などの活動を行なっていました。また、産業支援機関があることで、さまざまな起業家の方が京都経済センターに集まってくるので、新しい一歩を踏み出す人のための共創の場として「KOIN(Kyoto Open Innovation Network)」というオープン・イノベーションのスペースも開設いたしました。そして、2020年7月に京阪神がスタートアップ・エコシステム拠点都市に選ばれたこともあり、京都としてもスタートアップへの支援に、より力を入れていくという思いから、知恵森にスタートアップ推進部が新設されました。

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 スタートアップ推進部が手掛ける支援内容を教えてください。

川口 スタートアップ推進部は、「京都スタートアップエコシステム」の事務局を担っています。まずは、スタートアップエコシステム推進協議会の組織団体(30団体)の皆さんと協力し、京都のスタートアップ支援機関の支援策を一覧にし、不足している支援や課題、より充足すべき支援を洗い出し、プレシード期(起業前)とシード期の支援が、まだまだ不足していることがわかりました。そこで、スタートアップ推進部では今年度からプレシード期の支援を重点的に取り組んでいます。具体的には、プレシード期を対象としたセミナー「Kyoto Startup Challenge」の実施や、首都圏のVCと京都のスタートアップを繋げるために、VCがビジネスアイデアや財務計画のブラッシュアップをサポートする「VC壁打ち」の機会を提供したりしています。また、起業家から、「士業(弁護士や公認会計士)の方に相談したいが、スタートアップに精通した方に出会えない」という悩みを以前から聞いていたので、スタートアップ支援に実績のある士業の方と協力し、相談できる場も設けました。さらに、幅広く個社ごとの相談にも乗っていて。課題や要望を伺った上で、適切な支援機関へ繋いでいます。大阪や神戸の支援機関との相性が良い場合はそちらを紹介するなど、京阪神で連携して課題を解決することを意識しています。

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田中 これまでは、プレシード期の起業家がコミュニティなどに所属せずにスタートアップの創業に必要な知識を学べる機会がありませんでした。そのため、Kyoto Startup Challengeでは「スタートアップのアイデアを見つける方法」や「スタートアップにおけるファイナンス」などをテーマとした講座を実施しています。全4回ですが、興味のある回だけに参加してもらってもかまいません。すでに数回開催していますが、毎回20人前後の方が参加されています。事務局調べにはなりますが、京都には現在360社ほどのスタートアップがあり、うちプレシード期もしくはシード期のスタートアップは90社ほどあるので、彼らを対象とした支援をより充実させていきたいです。

 セミナーに参加するプレシード期の起業家や「VC壁打ち」を務められるVCはどのように集めているのですか。

川口 ここ数年、京都のスタートアップを全国にPRできるイベントへの登壇機会を複数いただいており、VC側から「京都のいいスタートアップを紹介してほしい」と頼まれたりすることも増えていて、地域のスタートアップへの注目度が増しているような追い風を感じます。また、京都の起業家や起業家支援に携わる人が参加できる「Startup Capital Kyoto」というSlackコミュニティをジェトロ京都が運営してくれているのですが、そこにはもう220人以上が参加していて、参加者間で繋がる方も増えるなど、非常に盛り上がりを見せていますよ。

田中 あとは、関西U29アクセラレータープログラム「Re:Vive」と連携してセミナーなどを開催しているので、Re:Viveが持っているネットワークを活用させていただいたり、KOINに来られた起業家の卵のような方にアプローチしたりしていますね。

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かつては「ベンチャーの都」 今、目指すは「スタートアップの都」

 支援者として、京都のスタートアップの特徴をどう感じていますか?

川口 京都はものづくり系の企業が多く、60~70年前から「ベンチャーの都」と呼ばれ、ベンチャー支援も諸先輩方のご尽力もあり、過去から非常に盛んな都市だと感じています。また、人口10万人あたりの学生数・大学数が全国1位で、留学生が1万人いることも大きな特徴です。スタートアップをカテゴライズしてマッピングしてみると、ライフサイエンス・ソーシャル・アグリ・ハードウェアなど、どの領域のスタートアップもまんべんなく創出されていて、これは京都独自の特性だと思います。

 これまで支援に携わってきて、印象に残っているエピソードはありますか。

田中 あるスタートアップがアクセラレーションプログラムに参加されたのですが、最初はピッチ用の資料が学会の発表資料のように難解だったんですね。しかし、プログラム中に「専門的すぎて誰も理解できないから、もっとシンプルに」といったフィードバックを受けてブラッシュアップを重ねた結果、ものすごくシンプルでわかりやすい資料が完成して。代表の方が、フィードバックを素直に吸収できる柔軟な方だったからこその変化ですが、資金調達の際などにも資料のわかりやすさは重要になるので、良いきっかけになってよかったと思いました。

川口 まずはバイオームさんとの出会いです。代表の藤木さんはいつも、「創業当初に行政の補助金をいただいたことが、事業を行なう上ですごくプラスになりました。また、行政だけでなく金融機関なども含めて、京都全体で支援していただいていると感じます」と話してくださっています。私自身はもともと京都市の職員で、当時は補助金の担当をしていました。従来担当していた企業さんと異なり、藤木さんがスタートアップらしい補助金の活用をされていたのを見て、私たちが補助金を設計する際の参考にさせていただいたので、とても印象的なんです。オール京都で支援できる体制と、支援したくなる藤木さんのお人柄という関係性がすごく理想的だなと思っています。もう1つが、従来から支援メニューをご活用していただいているFLOSFIA(フロスフィア)の井川部長から、「関西への事業展開を検討している東京のスタートアップを紹介するから、何か支援できることがあればサポートしてあげてほしい」とご紹介いただいたことです。その時は、京都の支援策だけでなく、大阪や神戸の担当者ネットワークを使って支援ができそうか聞いてみたりと、寄り添って1社を支援することで別のスタートアップを紹介していただいたり、こちらから何かをお願いしたときに快諾いただけたりといった良好な関係性を築けて、それが結果的にスタートアップのエコシステム形成に繋がるのではないかと感じました。

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「京都のスタートアップ情報は知恵森に聞こう」と頼られるポジションを目指して

 お二人のキャリアや、支援者としてやりがいに感じることを教えてください。

田中 私はもともと京都府職員です。これまでは、法人事業税や府民税の申告業務の管理をしたり、新商品開発や販路開拓をサポートして伝統工芸の職人さんを支援したりといった仕事に携わってきました。2020年度から知恵森で働いていますが、今携わっているスタートアップ支援は「どうすれば、右肩上がりの成長曲線を描けるか」を考える仕事であり、支援している中で製品・サービスの完成や資金調達の成功といった嬉しくなるニュースをたくさん耳にできるので、大きなやりがいを感じています。

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川口 私は、民間企業勤務を経て2011年に京都市役所に入庁して以来、ずっと産業支援を担当しています。これまでには、伝統産業を振興するためにインバウンドツアーを企画したり、ハードウェアスタートアップ支援拠点「Kyoto Makers Garage」を、京都のVC であるMonozukuri Venturesさんと連携し立ち上げたり、JETRO(大阪・ベトナム)への出向中に食品系の中小企業の海外展開支援を行なったりしてきました。現在支援をしていて思うのは、行政に携わる者だからこそ、目先の数字を追うだけでなく、親身になって支援に時間を割くことができるということです。この考えは甘いかもしれませんが、支援する立場としては長期的な目線に立って時間を使うことができ、非常にありがたいことであると感じています。また、仕事を通じて私個人では到底お会いできない方と出会え、その出会った人の力を借りてまた次のプロジェクトを企画できたりするところに面白さを感じています。

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 最後に、今後の目標を教えてください。あわせて、起業を目指す方へのメッセージもお願いします。

川口 京都は今スタートアップ支援がどんどん充実してきているので、スタートアップと支援機関の繋ぎ役としての役割をもっと果たしていきたいと思っています。また、より多くのスタートアップと繋がり、役に立つために、私たちが行なっている支援策を紹介するだけでなく、実際に「京都のエコシステムが、スタートアップのどんな課題をどのようにして解決したか」がわかる事例も紹介していく予定です。京都のスタートアップ支援側の情報の一元化と発信にも、より力を入れていくので、京都でスタートアップ創業を考えている方はお気軽に連絡をいただけると嬉しいです。

田中 知恵森は京都の産業支援機関の調整役のようなポジションでありながら、まだまだその役割を外部の方から十分に知られていないことが課題だと思っています。そのため、発信を強化することで、首都圏のVCなどから「京都のスタートアップについて聞きたいことがあるから、まずは知恵森に連絡してみよう。そうすれば、適切な機関や企業と繋げてくれるだろう」と思ってもらえるポジションになりたいです。知恵森はどんなお問い合わせにも対応していますし、一緒にお悩みの解決策を考えることができますので、スタートアップの方からのご連絡もお待ちしております。

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ライター / 倉本 祐美加

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