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株式会社アロマジョイン

代表取締役社長 金 東煜(キム ドンウク)

香りコミュニケーションで世界を変える!世界初の"デジタル香りコントロール装置"を開発した京都発スタートアップ

映画で草原が映し出されたときに爽やかな香りが漂ってきたり、グルメ番組を見ていたらおいしそうな焼肉の匂いが漂ってきたり、寒い日に家族や友達へ焼き芋の匂いをメッセージで届けられたりできたら、なんだか面白そうだと思いませんか?このような、香りによるコミュニケーションを実現できる世界を目指しているのは、J-Startup KANSAIにも選定され、世界初のデジタル香りコントロール装置の開発に成功した、株式会社アロマジョインです。代表のドンウクさんに、独自の技術や香りの活用可能性、関西で起業して感じるメリットなどを伺いました。

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原点は、母親が言った「いつかテレビに香りが付くかもね」

 まずは事業内容について教えてください。

ドンウク 「香りコミュニケーションで世界を変える」を信念として、世界初のデジタル香りコントロール装置を開発・提供しています。「香りコミュニケーション」という言葉を用いているのは、香りをデジタル化することができれば、文字や音声のようなコミュニケーションツールになると思っているためです。

 なぜ、「香り」という分野に着目したのですか?

ドンウク 僕が生まれ育った韓国では、1980年にカラーテレビ放送が始まりました。我が家はいち早くテレビを購入して、画面にくぎ付けになったんですね。そのときに母親が言った、「テレビに色が付いたんだから、いつか香りも付くんじゃないか」という言葉がずっと頭の片隅に残っていて。大学院に進学した際に調べてみたところ、テレビから香りを出すための研究がすごく遅れていることを知りました。「これでは、テレビから香りが出る時代が来ないぞ」と危機感を感じたんです。「それなら自分がやろう」と思い、そこから16年間、香りの分野で研究を進めてきました。

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分子レベルで香りをコントロールすることで、「一度付くと消えづらい」を解決

 開発・提供されている「世界初のデジタル香りコントロール装置」が、どんな特徴を持っているのかを教えてください。

ドンウク 「Aroma Shooter®(アロマシューター)」は、香りカートリッジを搭載できて、コンピューター、スマートフォン、VR / ARなどすべての機器とシームレスに連動するように設計されたデバイスです。0.1秒ですばやく香りを切り替えながら、複数の香りを噴射することができます。これまでの香り分野では、液状の香料をミストにして散布するため、髪の毛や服に付着して消えづらいといった課題がありました。しかし、私たちは香りを固形化して、分子レベルで香りをコントロールすることに成功したため、さまざまな活用余地が生まれているんです。

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散布される香りが変化しても、前の香りが全く残らない技術を体験

 どんな活用事例があるんですか?

ドンウク 以前はファッションビルで、"香水テスター”としてアロマサイネージを使用していただきました。香水って、試しに少量を付けても香りが残ってしまうでしょう。そうなると複数の香りの比較もしづらいですよね。だから香りをデジタル化して、アロマサイネージにタッチするだけでいろんな香水の香りを楽しめるようにしたんです。どんな香水がよくテストされているかというデータも取れますからね。ただ、これまでは大掛かりな装置を開発して納品してきたので、今後はサブスクリプションモデルで気軽に利用できるサービスを提供していきたいと、今開発を進めている最中なんです。

 現在はどんなサービスを開発しているのですか?

ドンウク 「リフレッシュ」や「癒し」がキーワードになるサービスです。今って、目から取り込む情報が多くてみんな疲れているでしょう。疲れたときにお酒を飲んでストレスを解消するのもいいけれど、それだと余計に疲れてしまうこともある。だから、ストレス解消に役立つ静的なものを開発したいなと思っています。たとえば、水の流れる音と香りを組み合わせることで、目を閉じれば川や温泉に行けるような、“瞬間旅行”体験サービスなどです。こうしたサービスなら、リモートワーク中のリフレッシュにも使えますから。実証実験を進めている最中なので、クリエイティビティが増したり生産性が向上したりといった効果が現れるといいなと思っています。他には、音と香りが出るデジタル絵本の開発を芸大の方と一緒に進めています。そして、長期的には動画配信プラットフォームやSNSと連携して、香り付きの動画や香り付きのコミュニケーションアプリなどを実現したいですし、もちろん香り付きテレビも開発したいです。

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街でも家庭でも、「香りコミュニケーション」が当たり前になれば

 開発の過程で、どの部分が大変でしたか?

ドンウク やはり香り分子をコントロールするマテリアルが大変でした。あとは、デバイスをどこまで小さくできるかというところも、今まさに課題としているところです。日本では家電領域で“軽・小・薄”が求められますよね。香りが出る装置(嗅覚ディスプレイ)が普及するためには、ウェアラブルで“軽・小・薄”であることと、“いかに多くの香料を蓄えて長持ちさせるか”の両方を実現することが必要だと感じています。

 今後のビジョンを教えてください。

ドンウク まずはBtoBでサービスを展開していきます。普及すれば、生活者の方に「最近、街でよく見るなあ」と感じてもらえる機会が増えると思うので、それからはBtoC向けにも販売していきたいです。嗅覚ディスプレイがあらゆるところに組み込まれて、かつ一人ひとりが嗅覚ディスプレイを持つような世界になればいいなと思います。香りでコミュニケーションを取ることが当たり前になって、香りでつながるという新しい文化をつくりたいですね。

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関西は、スタートアップがサバイバルしやすい環境

 関西で起業してみて、いかがでしたか?

ドンウク 営業が東京中心になってしまうことは仕方ないかなと思っています。ただ、メリットもたくさんあります。たとえば、優れた設備のあるオフィスをリーズナブルで借りられて、ものづくり企業に対する助成金が豊富なので、スタートアップがサバイバルしやすい環境であることです。また、京都は世界的なブランドとなっている製造業大手も多く、ものづくりのエネルギーが集まっているように感じます。「京都で働きたい」という理由から、当社に興味を持ってくれる方もいるんですよ。

 最後に、起業志望の方へアドバイスをお願いします。

ドンウク 僕が唯一後悔しているのは、もっと早く起業すべきだったということです。10代から新聞配達を始め、バイクの整備士にもなり、必死で勉強して学位を取るなどいろいろなことをしてきました。でも、どんなことよりも面白いと感じるのが起業なんです。自分で解を見つけていく作業は難しく時間が掛かるからこそ、早く取り組むべきだと思っています。人生は一度きり、迷っている時間がもったいないので、一日も早く会社を設立してオンリーワンのドメインを取ってください。

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ライター / 倉本 祐美加

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