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株式会社Anamorphosis Networks

代表取締役 炭谷 翔悟

中小製造業が簡単にAIを導入できる時代をつくる?!「AIの民主化」実現を目指す起業家の挑戦

AIに注目が集まっている昨今ですが、製造業にAIを導入する場合は実証実験時と製造ライン等への装置導入時の2度大きな費用が掛かること、AI人材が不足していることなどから、中小企業でのAI導入はなかなか進んできませんでした。その流れを大きく変えようとしているのが、AIプラットフォーム「OpenPoC」を運営する株式会社Anamorphosis Networks(アナモルフォシスネットワークス)です。代表取締役の炭谷さんに、事業を考案した経緯や学生起業家に伝えたいメッセージなどを伺いました。

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誰もが簡単に安価でAIを導入できるしくみを提供

 まずは事業内容から教えてください。

炭谷 メイン事業は、AIプラットフォームである「OpenPoC(オープンポック)」の運営です。当社のHP上でAIのソフトウェアを提供していて、ダウンロードさえしてもらえればAIを試すことができます。「誰もが使えるAI」をモットーに事業を行っており、操作はクリックなどの簡単なマウス操作だけで完結するため、どんな方でも扱うことのできる点が特徴です。ダウンロード自体は無料で、PoC*後「ラインに導入できそう」となった場合に費用をいただく形にしているので、システム導入のミスマッチを最大限削減することができます。

*PoC:実証実験。新技術などを実際の場面で使用し、実用化に向けての問題点を検証すること。

 OpenPoCにはどんな製品がありますか?

炭谷 主力製品は「Cassava(キャッサバ)」と「49Mierre(ヨクミエール)」です。Cassavaは製品の良品条件を完全自動で学習するAIソフトで、傷やへこみのある良品以外のものを検出することができます。49Mierreは、先端画像処理技術を活用したソフトで、半導体ウェハーのような製品中の見えにくい傷や、髪の毛などの異物混入を容易に発見することができます。どちらも、メインのお客様は自動車メーカーや食品メーカーなどの製造業になります。

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Cassava(キャッサバ)の操作画面:クリックなどの簡単なマウス操作のみで「誰もが使えるAI」

GAFAに並ぶような、グローバル企業を目指したい

 なぜ「AIプラットフォーム」を提供することにしたのですか?

炭谷 起業した当初は、お客様を1社ずつ周ってAIのソフトウェアの導入を検討して頂いておりました。ただ、お客様のデータを見せてもらうためにはNDA*の締結が必要です。NDA締結後は見積りを提出し、決裁が降りるまでに時間が掛かってしまうため、本格的なAI導入を検討するまでに3〜4ヶ月を要してしまいます。「お客様のデータを当社が見なくても、お客様側で簡単にAIを試してもらうしくみを作ることができれば、スムーズにAI導入を検討してもらえるのに」と思ったのがOpenPoC構想のきっかけでした。当社へのPoCの結果報告は任意ですが、当社では不適合率などの元データがマスクされた数値結果しか見ないので、NDAを結ぶほどの機密情報のやりとりはありません。

*NDA:機密保持契約。取引を行う際に締結する、営業秘密や個人情報など業務に関して知った秘密を第三者に開示しないとする契約。

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 同じく「AIプラットフォーム」を提供している企業もあるようですが、OpenPoCならではの特性はありますか?

炭谷 確かに、グローバルに展開している大企業がAIを作れるサービスを提供しています。それらは技術的には素晴らしいものばかりですが、「何に活用するか」をユーザーに委ねているため、「何でもできる」代わりにユーザー側にリテラシーが無いと思考停止に陥ってしまいます。一方でOpenPoCは、ソフトウェア毎に「何ができるか」を限定しており、用途が明確であるため、思考停止することなくPoCを実施することができます。

 今後のビジョンを教えてください。

炭谷 直近で注力するのは、商社やハードウェア開発の得意な会社とタッグを組んで販路を拡大していくことです。将来的には、OpenPoCというプラットフォーム上にさまざまなAIベンダー企業のソフトウェアが並び、お客様がその中から好きなものを選ぶことができるようになることを目指しています。分野は違いますが、ECサイトで有名なAmazonみたいなモデルになるといいですね。そして、GAFAに並ぶような、京大発のグローバル企業として知られる存在になりたいです。

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事業のビジョンとともに、キャッシュが回るしくみも構想しておくべき

 どうして起業しようと思ったのですか?

炭谷 きっかけは3つありました。まず、キャリアの選択が柔軟になった昨今、博士人材のキャリアの多様化が求められると思ったため、アカデミア以外の進路を検討していたこと。2つ目に、文部科学省の次世代アントレプレナー育成事業(EDGE-NEXT)など、起業について学ぶ機会や学生起業を応援するスキームがたくさんあると大学院時代に知ったこと。そして、3つ目に「AIの民主化を進めたい」という自分のビジョンに共感してくれる仲間が周りに多くいたことです。事業を行いながら研究を進めるキャリアパスもありだなと思い、起業に至りました。

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 研究や勉強は幼い頃から好きだったんですか?

炭谷 いえ。中学3年生のときにケガをしてしまってサッカーができなくなったから、「暇だし、やるか」とやっと勉強し始めたくらいでした。なんとか入学した高校の最初のテストでトップの成績を取ってしまったので「キープしなきゃ」という誰からでもない謎のプレッシャーに駆られて否応なしに勉強を続けていましたね。でも、たくさん勉強した甲斐あって、大学進学時には志望校に合格できました。勉強が楽しくなったのは大学に入ってからです。電気回路の方程式や直線運動・円運動の方程式が同じ二階の微分方程式で表現できる物理の面白さ、ベイズ推定のようなデータ駆動型の統計学の面白さに気付き、探究心をくすぐられました。大学時代、講義の後はほぼ毎日図書館に篭って終電間際まで勉強していましたね。

 起業して困ったことはありますか?

炭谷 “お金を稼ぐ”視点が低かったことに気付かされました。人を雇うのにどれだけのお金が掛かるのか、どんな税金がいくら掛かるのかなども知らないまま起業したので、驚くことばかりでした。キャッシュが回らなくなって生活がカツカツな時期もありましたね。「これを実現するぞ!」という熱い思いも大事ですが、キャッシュが回る仕組みをどう作るかは起業前に考えておいた方が良いと思います。未来の起業家の方には、自分のように苦しんでほしくないので、売り上げ予測用のシートなど起業時に役立つフォーマットの無料提供を今後行う予定で準備を進めています。

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学生起業家なら、ビジネス感覚は意識して身に付けておいた方がいい

 炭谷さんは学生時代に起業していますが、学生起業家として気を付けた方がいいことはありますか?

炭谷 ビジネスのお作法や流れを掴むことですね。私は親切なお客様のお陰で、見積りの出し方や社内の決裁フローなどを学ぶことができましたが、社会人の先輩に聞くなどして起業前に学んでおきましょう。私からのアドバイスは、初めて会う方と名刺交換をした際には役職を確認することです。会社においてあなたの目の前にいる方がどのような立場の方なのかを知った上で、その方をサポートするように行動すればきっとうまくいきます。

 最後に、これから起業をしようとしている人に向けてメッセージをお願いします。

炭谷 経営ができるから起業したわけではなく、起業して事業を行う中で経営ができるようになったので、まずは一歩を踏み出す勇気が大事かなと思います。ただ、安直に踏み出すのではなく、インターネットが大きく発展している現代において、調べられる情報は事前に収集した方が良いです。もうひとつアドバイスするなら、最高のNo.2を見つけてください。周りのスタートアップ企業を見ても、うまくいっている企業には代表と信頼関係の厚いNo.2がいて、かつ代表との役割分担がしっかりとできているように感じます。互いの強みで補い合える存在とともに起業するのがベストだと思います。

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ライター / 倉本 祐美加

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