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【ホテルDX市場】トレンドや今後の動向を現役ホテルマネージャーが徹底解説

こんにちは、関西スタートアップニュース編集チームです!

最近良く聞く「DX」という言葉。意外とよくわからないという方も多いかも知れません。デジタルトランスフォーメーションの略で、簡単に言えばデジタルに最適化していくというような意味ですが、これはアナログ色の強い業界のほうが自然とインパクトが強くなります。

今回ご紹介する「ホテル・旅館業界」は「おもてなし」という日本語に象徴されるように対面でのサービス、つまりアナログ色の強い業界です。今そのホテルのDX市場に何が求められているのか。

DXとはなにかといった基礎的な部分からトレンド、今後の動向まで現役のホテルマネージャーである筆者が網羅的にご紹介してまいりますので、是非最後までご覧ください。

<目次>

  • DXとは

  • ホテル業界のDXで期待されること

  • 今後の動向予測。法整備も求められる。

  • まとめ

DXとは

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Digital Transformationの略がDXなわけですが、なぜ「X」なのかが日本人には分かりづらいですよね。

英語のTransには交差するという意味があることから英語圏ではXと略されることがあるためにこう呼ばれています。

Transformationは変容するといった意味ですので、デジタルに変わっていくとなります。これは単純にパソコンやスマホを使うというより、ビジネスの在り方や仕事の仕方、利益の出し方など全てにおいてデジタルに最適化するという広い意味で捉えられています。

身近の例を上げれば、つい最近まで映画を見ると言えばDVDという「プラスチックの円盤」を買うなりレンタルするなりして見ていたわけですが、今ではNetflixに代表されるサブスクリプション型の配信サービスが主となりました。

高速インターネット回線と高性能な再生端末の普及というインフラ環境が可能にしたDXの例と言えます。

DVDはそもそもデジタルで記録されている媒体ですが、媒体のみならず流通や消費の形すべてが変わったのがDXの例としてわかりやすいでしょう。

ホテル業界のDXで期待されること

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では、ホテル業界はどうでしょうか。サービス業全般に言えることですが、ホテルや旅館はとてもアナログな部分が多く残っています。

いまだにチェックインはフロントでスタッフと対面して手渡しで鍵をもらいますし、少し高級な旅館だと着物姿のスタッフの方がお茶とお茶菓子を持ってきてくれて、別室で手続きをしてからいざ客室に、という一連の流れがその旅館の売りだったりします。

ホテル・旅館のDXで期待されるポイントとしてあげられるのは

  • 業務フロー自体のDX

  • DXによる収益体質の改善

  • 感染対策を組み込んだDX

などです。

■業務フロー自体のDX

ホテルや旅館に宿泊するときに、「なんでこんなことを。。。」と思うことはないでしょうか?

例えばチェックインする時に記入する「宿泊者台帳」。日本人であれば身分証との照合も不要なので、ウソを書いてもバレませんし、そもそも昨今の宿泊の多くはOTA(オンライン予約サイト)経由であるため、OTAに個人情報が記録されているので、不要といえば不要です。

後に詳述する法律の問題もありますが、この辺りはDXによる改善の余地が大きく残っています。

すでに予約はOTA経由などでかんたんにスマホで完了させられるようになっています。チェックイン、鍵の受け渡し、フロントへの質問やルームサービスの注文、近隣情報の取得、精算、チェックアウトなどなど、今は電話や対面で行っているサービスも実はそのほとんどでDXが可能です。

もちろん旅先では対面でのサービスもとても重要ですが、一方でビジネス出張など、「とにかく簡潔に済ませたい」というニーズもありますので、その辺りはDXで生まれる新たな選択肢にも期待したいところ。

■DXによる収益体質の改善

ホテル・旅館業界は日本では珍しく「ダイナミックプライシング」が浸透している業界です。需給バランスによって価格を決定するこの仕組ですが、収益を最大化するためにとても重要なファクターとなっています。

時期によって同じ部屋でも全く違う価格に驚くこともあるかも知れませんが、実は「価格は需給バランスによって決まる」は経済学の基本原則でもありますので、この流れは今後加速していくと考えられます。

大手チェーンホテルなどはこのプライシングにとても多くのリソースを割いているわけですが、DXによって個人が経営する小さな宿でもよりその恩恵に預かれるようになると考えられます。

その地域や時期ごとの人出や人々の動向は「長年の勘」というよりも「ビッグデータ」からのほうが正確に導き出せるため、すでにOTAを含む様々な企業からソリューションが提供されています。

Kansai Startup NewsでもWASIMILというソリューションを開発している株式会社AZOOの横田代表取締役のインタビュー記事を掲載していますので、是非ご覧ください。

■感染対策を組み込んだDX

ここが新型コロナ発生によって大きく変わった部分です。特に「おもてなし」を重視してきた日本の宿泊施設は、温泉やお膳を並べてお酒を飲む宴会文化などと相まって「感染リスク」の高い局面がとても多いサービス形態でした。

感染対策という観点で考えれば、「ヒトとの接触は少ないほど良い」わけなので、DXによる大きな改善が見込める部分ではあります。

実際にホテルを運営している筆者からしても、技術的には一度も接触せずに宿泊サービスの提供は全く問題なく可能です。

客室や通路などの共有部分の除菌を徹底し、QRコードやスマホアプリなどの電子キーを採用すれば感染リスクは「ほぼゼロ」と言えるところまで下げることができるでしょう。

実際にホテル・旅館とは違う法律が適用される「民泊」においては完全に無人運用の施設も多く見られます。従来は無人運用は「おもてなし不足」というマイナスの側面として見られていたところもありますが、「感染予防」という観点がこの見方を大きく変えました。

「安心・安全」の訴求という点でもDXが求められると言えるでしょう。

今後の動向予測。法整備も求められる。

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となれば今後はどうなるかですが、全体としては間違いなくこの流れは加速していくはずです。

  • 施設側の利益率向上

  • 顧客側の手続きの簡素化

  • 社会としての感染リスク軽減

というwin-win-winの図式が成立するからです。

もちろんその流れの中でも、徹底的な感染予防の上で室の高いおもてなしを提供する施設もあるでしょうし、一方では完全無人型やロボットによる接客をするホテルなども増えていくかも知れません。選択肢の中に、デジタルに最適化された施設が増えるというイメージになります。

■法律の問題

ここででてくるのが法律の問題です。日本の旅館やホテルを管理する法律は旅館業法ですが、なんと制定が昭和23年です。民泊騒動を経て多少の改正はありましたが基本思想はITどころかOAも誕生する前のものなので、現代の実情とはかけ離れた法律であることは否めません。

先述の宿泊者台帳も法律で規定されていますし、対面でのチェックインも同じです。さらに各自治体での上乗せ条例もあり、「技術的には可能なのに法的な問題で便利にならない」部分がどうしても残ってしまいます。

法律が変わらない限り柔軟な対応ができないのが行政で、実際に筆者も新型コロナショックの折、「それでも対面チェックインを義務付けるのか」と所轄の行政窓口に問い合わせをしましたが、答えは「法律に従ってください」でした。

感染対策は国全体を揺るがすほどの問題になりましたので、時代に合わせた法律の整備や柔軟な対応ができる行政体制の整備も必要になっていきます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。DXは小手先のデジタル化とは大きく違うこと、またアナログな業界ほど大きな改善が見込める「変容」です。

現代はビジネス環境だけでなく、人々の価値観や動き方も急激に変化する時代になりました。生き残るために変化を続けるのは必須で、特に古くからあるサービス業に置いては「温故知新」が求められるでしょう。本稿が読者の皆様のDXの一助になれば幸いです。

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ライター / 関西スタートアップニュース編集チーム